17412016/07/08(金)20:25:54ID:Nxz
手紙を開けることもなくすぐに家を出た。
彼女の家に向かって走った。もうその家に彼女がいないことは分かっていたけれど、いてもたってもいられなくなった。
彼女の家はいつもと変わらぬ姿だった。
けれどそこに彼女はいなかった。
立ち竦む俺に夏の日差しが容赦なく照りつけ
走ってきた俺の額には汗が滴り落ち、
頬には汗とは違うなにかがゆっくりと蛇行しながら流れていた。
17512016/07/08(金)20:30:17ID:Nxz
昨日の夜、彼女が発した言葉は
今日の出来事を予兆させるものはなく
ただ切なさと寂しさに滲んでいた。

なぜ引っ越したのだろうか。なぜ言ってくれなかったのだろうか。なぜ昨日俺に会ってくれたのだろうか。
聞きたいことが沢山あったがそのどれもが
彼女からの手紙の中に書いてあるだろうと思った。
17612016/07/08(金)20:35:11ID:Nxz
俺は家に帰ると、封筒の裏側に書かれている
全く知らない住所を数分間眺めていた。
遠い遠い場所だった。俺の昔行きたいと思ってた都会だった。

手紙を読めば、俺の知りたいことは全てわかるはず、
けれど封筒を開けることは出来なかった...
17712016/07/08(金)20:40:11ID:Nxz
怖かった。
彼女が引っ越す理由が俺だったのかもしれないと考えた。
あの日、先輩に俺は勇気を出して楯突いた。
けれどその日以降学校へは行かなかった。
もしかしたら俺のいない学校で彼女になにかあったのかもしれない。彼女が家に来てくれたのに拒み続けたからかもしれない。
そんな事を考えると怖くて、俺はまた逃げた。
17812016/07/08(金)20:49:05ID:Nxz
それから少しして俺達家族も引っ越すことになる。
理由はもちろん俺のためだ。
新しい中学校に夏休み明けから転入生として通った。
今度は中学校までは徒歩5分ほどだった。
両親と先生の勧めで部活にも入った。
最初は戸惑ったし抵抗もあった。相変わらずクラスでは1人だった。
17912016/07/08(金)20:51:14ID:Nxz
けれど、部活の中で数人の友達ができた。
勉強と部活に明け暮れる日々、暗い性格は少しづつ明るさを取り戻していったと思う。
そしてそれに反比例するように少しづつ心の中にある彼女への色んな気持ちが薄れていった。
18112016/07/08(金)20:58:43ID:Nxz
そして俺はそのまま高校へ入学する。
勉強はそれなりにできた、まぁまぁいい高校へ入れた。
中学時代の友達数人とも同じ学校だった。
高校でも部活は続けた、またも勉強と部活に追われる日々。
友達も数人しかいなかったし部活ではベンチ、
高校では勉強は真ん中の方、ぱっとしないどこにでもいる普通の高校生だった。けれど楽しかった。
あっという間に部活は引退、そして受験勉強。
その頃にはすっかり彼女のことは忘れていた。
184名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)21:05:31ID:lt5
引き込まれる
18512016/07/08(金)21:09:05ID:Nxz
大学は都会の私立大学へと進んだ。
家からは離れ、一人暮らしも始めた。
初めてバイトにも挑戦した。
中学時代、高校時代は女の子と全く関わることはなかったけれど
バイト先で1ヶ月の間、短期で入っていた女子高生とは仲良くなった。
18612016/07/08(金)21:14:15ID:Nxz
仲良くなったと言ってもバイト先で話すくらい。
他愛もない会話ばかりだった。
「今日廃棄もって帰っていいですかね?」
「コンビニ弁当は健康に良くないぞ、やめとけやめとけ」
「でも美味しいじゃないですか!」
そんな下らない会話ばかりだった。
18712016/07/08(金)21:19:35ID:Nxz
彼女とは仲良くなったけれど
バイトはすぐにやめた。大学受験の勉強があるからだろう。
それ以降俺は女の子と関わることは全くなくなった。
大学でも友達はいなかったし、少しづつ大学をサボるようになった。
留年にはならないよう最低限は出席し、なんてことのない毎日を過ごしていた。
18812016/07/08(金)21:23:07ID:Nxz
そんなこんなで1年が過ぎた。
中学、高校時代とは違い時間の流れがとても緩く感じた。
これから3年間、つまらない日々を過ごすのだと思うとさらに憂鬱になった。
18912016/07/08(金)21:25:19ID:Nxz
大学2年生になった頃には1年間続けたバイトをやめ
大学には最低限通いながら、それ以外の日は
部屋にこもる日々が続いた。
毎日なにか楽しいことないかな、なんて考えてた。
19012016/07/08(金)21:30:01ID:Nxz
そんなある日、大学で見覚えのある女の子を見かけた。

1年前バイト先が同じだった女子高生だった。
俺が驚いて声をかけると彼女はあまり驚いた様子は見せず
「お久しぶりです」と微笑んだ。
19112016/07/08(金)21:36:27ID:Nxz
続けて「後輩になりました!」と自慢げに言った。
まさかの再開、俺も少し嬉しくなった。
「後輩よ、合格おめでとう」自慢げに返した。
もう合格発表から数ヶ月たっていた。
「遅いですよ!なかなか会えないから辞めちゃったのかと思いました。」と後輩が言った。
19212016/07/08(金)21:41:18ID:Nxz
俺が通ってる大学はバイト時代に話してはいたけれど
まさか覚えていてくれたとは思わず更に嬉しくなった。
彼女は講義があるからと俺に電話番号を書いた手紙を渡し、笑顔で走っていった。
その夜、後輩に電話をかけた。
俺は昔から喋るのは得意じゃなかったけれど
その後輩とは普通に話すことが出来た。
何故なのかバイトの時から少し不思議には感じていたけれど
会話に夢中になるとそんな疑問はあっという間に消えた。
19312016/07/08(金)21:43:18ID:Nxz
それからというもの、俺は大学をサボることはなくなった。
時間が合えば後輩と一緒に昼食を取ったり
夜は他愛もないことを電話で話す仲になっていた。
19412016/07/08(金)21:45:10ID:Nxz
見てる人が少なくなってきましたね。
続きはまた後で書きます。
遅くてすみません。
195名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)21:52:04ID:wTc
はい、また後で~
202名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)22:12:04ID:Nxz
帰ってきたました。
いつの間にか伸びてて嬉しい
では続きを書いていきます。
20712016/07/08(金)22:21:13ID:Nxz
後輩と再開してからはとても充実していた。
大学では1人じゃなくなり、夜も毎日電話をした。
後輩の誘いでバイト一緒に始めた。
バイトの時間も下らない会話をしていた。
「今日廃棄持って帰りますか?」
「あれ、後輩ちゃんいらないの?」
「コンビニ弁当は不健康ですからね!」得意げに、そして嬉しそうに言った。
成長したね、なんて言ってほしそうな顔をしていた。
不器用で口下手な俺、彼女も出来たことはなく女の子とちゃんと会話したのも後輩が2人目だった俺はそんな小洒落たセリフを言ってあげられるような男ではなかった。
20812016/07/08(金)22:25:49ID:Nxz
「え、えらい!」最低限ではあるけれど俺にとっては最大限の返しだった。
後輩は不満な顔は見せず、えへへと笑った。
バイト中にはこんなこともあった。
後輩が店にかかってきた電話に出ると、どうやらクレームだったようだ。
電話の向こうでは「店長出せ!」と言っているようだった。
20912016/07/08(金)22:30:37ID:Nxz
「店長出せ店長出せ」とうるさいんですけど、どうしたらいいですか。後輩は困ったように聞いてきた。
不都合にも店長はおらずレジには数人が並んでいたため俺は手が離せず、仕方なく後輩に代わりに謝罪しといてと言った。
後輩はわかりましたと合図し、電話を持ってバックヤードに下がっていった。
21012016/07/08(金)22:35:19ID:Nxz
レジでの対応が終わり後輩の様子を見に行くと
未だ後輩は電話でクレームの対応をしていた。
俺はしまったな、と思いながら電話を代わり店長のフリをしてクレームの対応に当たった。ようやく終わったかと思い電話を切ると
横で大泣きをしている後輩、そしてレジで対応してる人はおらず
店内の客にかなり怒られた。
21512016/07/08(金)22:41:09ID:Nxz
そんな出来事があってか
後輩とはさらに仲良くなった。

ある日、後輩に「今度2人でどこか行きましょう」と誘われた。
正直嬉しかった。間髪入れず「行こう」と答えた。
220名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)22:46:05ID:PVL
何だろう、読んでて胸が痛い
22112016/07/08(金)22:47:25ID:Nxz
大学2年の夏に差し掛かる頃だった。
2人で水族館に行った。初めての水族館だった。
ものすごく楽しかった。
初めて見たジンベイザメ、それを指さしながら
「先輩、イルカってこんな大きいんですね!」
いや、どう見てもイルカじゃないじゃん。初めてみた俺でもわかったぞ。と思いながらも目をキラキラさせる後輩に
「凄いなぁ」なんて同調してみたりもした。
222名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)22:50:27ID:STk
最初の女の子と再会はするのかな。気になる。
226名無しさん@おーぷん2016/07/08(金)22:53:57ID:hzW
手紙はどうなったんだ……
1001オススメ記事@\(^o^)/2016/07/12 22:09:00 ID:narusoku