246名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)22:58:22ID:jfh
この時点で嫁さん亡くなって3年くらい?
247名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)22:58:58ID:n4c
>>246
三年ちょっとくらい
248名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)22:59:29ID:n4c
近所ということもあって2、3分で幼馴染みはやってきた
なんとも複雑なことに幼馴染みがやってきた途端、娘は泣き止んだ
それからすぐに疲れたのかしばらくすると寝てしまった
それを見て早速帰ろうとする幼馴染みになんだか悪い気持ちになって、寝顔見ながら一杯飲んでけよ最高のつまみだぞなんて言って引き止めた、幼馴染みも一杯だけねなんて言って付き合ってくれた
251名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:01:30ID:n4c
「こうやって、嫁さんと娘の寝顔見ながら晩酌したよ」

「そうか、確かに最高のつまみだわ」

「いつもありがとな、助けてくれて」

「良いよ、私娘ちゃん大好きだし食べちゃいたいくらいだし」

いつも通りの軽口の叩き合いだった
でも、俺のひょんな一言で幼馴染みの雰囲気が変わった
252名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:02:30ID:n4c
「娘もすごくお前に懐いてるしな」

「…そうだね」

「どした?」

「懐いてるってさ、なんか他人行儀だよね」

「いや、そんなつもりじゃ」

「親に懐くとか言わないじゃん」
253名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:04:21ID:n4c
「私、娘ちゃん本当に大好きなのよ、本当に本当に」

「自信過剰かもしれないけど娘ちゃんも私のこと好きではいてくれてると思う」

「でもさ、やっぱりふと思うのよ」

「私はこの子のママじゃない、ママにはなれないんだって」
254名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:06:48ID:n4c
そう言うと幼馴染みは下を向いたまま、涙をボロボロ流して肩を揺らし始めた
俺はそんな彼女に何も声をかけることもできず、部屋の中は静まり返っていた
255名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:07:03ID:n4c
不意に幼馴染みが立ち上がった
「わけわかんないよね、ごめん」
そういうと彼女は逃げるように家を出て行った
257名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:09:27ID:n4c
そんなことがあった週の土曜日、珍しく親父からすぐに実家に来いとの電話があった
実家に戻りリビングに入ると親父と母ちゃんが真剣な表情で座っていた
一緒にいた娘はすぐに母ちゃんが別の部屋に連れて行った

「なんだよいきなりどうしたんだよ?」

「お前、幼馴染みちゃんのことどう思ってるんだ?」

「どうって、本当に感謝してるよ」

「付き合ってるのか?」

「まさか、付き合ってないよ」

「そうか、なら結婚する気もないって事だな」
258名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:13:39ID:n4c
そう言い終わると、親父はものすごい形相をして俺の顔面を殴った
あまりにいきなりすぎて何が何やら訳がわからなかった

「馬鹿野郎」

自慢じゃないが、生まれて初めて親父に殴られた瞬間だった

幼馴染みが泣いたあの日、どうやら親父はたまたま日課のウォーキング中にうちの前を通り、さらにうちから泣きながら出て来る幼馴染みを見たらしかった
259名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:14:10ID:n4c
「あの子には感謝しても感謝しきれない、頭も上がらない。あの子がいなければ娘は本当に寂しい思いをしてたんだぞ」

「わかってるよ」

「わかってない、お前は何にもわかってない」

「じゃあ親父は何がわかってるんだよ!」

真昼間、酒が入ったわけでもないのに大の大人が大声張りあげ合う

「向き合え!娘のためにも嫁ちゃんのためにも、幼馴染みちゃんのためにも、男だろ!」

殴られた痛みなんか一瞬だった、本当のパンチはこの言葉だった
260名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:16:36ID:n4c
その日の夜、幼馴染みが家にやってきた
この前変な雰囲気で帰ったお詫びだとビール数本とおつまみを持って

娘は幼馴染みが来たことでテンション最高潮、アンパンマンのチョコレートを貰って興奮の坩堝だった

娘が眠り、幼馴染みと二人での晩酌の時間になった時親父の言葉が頭の中に浮かんだ

「なぁ」

「ん、なに?」

「変なこと言うけどさ」

「もしこの子のママになってくれないかって言ったら」

「うん」

「お前なんて答える」
262名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:27:15ID:n4c
情けない話だけどこの時の俺には精一杯の向き合いだった

「それは…無理な話かな」

「娘ちゃんのママは嫁ちゃんだけなんだよ」

「だから私には無理だ」

「私にはできない」

「おう、そうか…変なこと言って悪いな」

「酔ってんじゃないのおじさん、らしくないぞ?」

この会話から、幼馴染みと少しの間距離ができた
お互いに気まずさを持っていたんだろうけど、1日2日では修復できなかった、それでも半月もたつと以前と同じような間柄には戻れていた
264名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:32:18ID:n4c
それからさらに少し経ったある日、また幼馴染みがうちに遊びに来た
またもや娘はテンション最高潮だった、マサイ族並みのジャンプで幼馴染みを歓迎してた

幼馴染みもいつも通り娘にハグして嫁似のほっぺたに頬ずりしてた
「可愛いなぁいつも、パパに似なくて良かったねぇ」とか余計なことも言ってた

しばらく三人で人形遊びをして、娘がハンバーグ食べたいと言ったから夕飯に近くの洋食屋へ出かけた
265名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:32:33ID:n4c
娘は幼馴染みがいる上に大好物のハンバーグを食べるという幸福感からか、ハンバーグを一口食べては幼馴染みに抱きつき、また食べては抱きつきを繰り返していた
俺がお行儀悪いからやめなさいと注意してもなかなかやめない
だけど、幼馴染みがダメでしょ!というと一発で言うことを聞いた
あぁ、やっぱり父親としてまだまだダメなんだなぁと感傷に浸っていたその時、娘がとんでも無いことを言った

「お母さんごめんなさい」
266名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:37:53ID:n4c
その場の空気が一瞬止まった、言われた幼馴染みは驚いて何も返事が出来ない状態だった

「幼馴染みおねぇちゃんはお母さんじゃないの?」

「違うよ、幼馴染みおねぇちゃんはママじゃないんだ、娘ちゃんのママはお空に行ったんだよ?」

娘が続けて喋る、俺は娘が私のママはどこにいったのと聞かれた時の言葉で返す

「知ってるよ、ママはお空に行ったんだよね」

「そうだよ、だからね…」

「ママとお母さんは違うんじゃないの?」

「えっと、それはね…」
267名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:39:53ID:n4c
俺が答えに窮しているとさっきまで動かなくなっていた幼馴染みが急に笑い出した

「そうか、ママとお母さんは違うのか!面白いな娘ちゃんは!」

幼馴染みの急激なテンションの上がり具合に今度は俺と娘が驚いて黙ってしまった
とてもじゃないけど、冗談も返せなかった
268名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:43:44ID:n4c
洋食屋からの帰り道、熟睡状態の娘をおぶり三人で歩いている時、幼馴染みがふとさっきの話に戻った

「ねぇ?」

「ん?」

「面白いよね、ママとお母さんは違うって」

「なんとも子供ならではの発想だよな」

「でもあれでなんか吹っ切れた、あんたさ、私にこの前あの子のママになってって言ったよね」

「うん言ったね」
269名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:47:45ID:n4c
「私あの時も言ったけどママにはなれない、嫁ちゃんには絶対になれないの」

「わかってるよ」

「でもね、私お母さんにだったらなりたいかな」

「本気で言ってんのかよ?」

「本気も本気よ、30超えた女こんな事冗談で言えないって…どう、嬉しい?」

「お、おう…嬉しい」

「ならさ、聞かせてよ」

「あんたは私の事、女として好き?」
270名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:48:02ID:n4c
「私はあんたのこと5歳からずーっと好きだった、でも素直に言えなかった」

「お前彼氏いたろうがよ」

「この歳で男性経験無い方が異常でしょ?」

「まぁそうだけどさ」

「あんたのこと好きだったのに、素直になれないし、そうこうしてるとあんたちょくちょく彼女作っちゃうし、そりゃこっちだって作りますよ」
271名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:48:16ID:n4c
「嫁ちゃんとあんたが結婚した時、正直悔しかった、でも嫁ちゃんのことも大好きだったから心の底から二人に幸せになって欲しかった」

「私が娘ちゃんを可愛がるのはこの子が可愛いってからだけじゃないの、娘ちゃんが私が好きだった嫁ちゃんとずっと好きだったあんたの子供だから」

「もしあんたが私を女として好きじゃなければ、無理にはしないほうがいい、このままの関係でも充分だもん」

「でも嫁ちゃんと娘ちゃんの次でも良い、私の事も好きになってくれるなら」

「私を娘ちゃんのお母さんにしてください」

「おう」

「おうってなによ」

「いや、好きです」

「俺と結婚して、家族になってください」

「たまには素直な言い方も出来るじゃん」
272名無しさん@おーぷん2016/07/14(木)23:48:38ID:n4c
唐突な話だった、でも迷いはなかった
嫁に続き2回目のプロポーズ
街灯の明かりぐらいしかなひっそりとした近所の見慣れた道だった

嫁への気持ちは変わらないが、一方で確かに幼馴染みに好意を持っていたし、幼馴染みなら娘を本気で愛してくれると思ったから

ふと気づくといつの間にかおぶっていた娘が起きていた
寝ぼけているようだったが、「お姉ちゃんがお母さんになってくれるってさ」と話すと嫁似のほっぺたを両手で挟んではにかんで、また眠ってしまった
1001オススメ記事@\(^o^)/2016/07/19 12:09:00 ID:narusoku